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実印と認印の違いとは?使い分けと選び方

2025.07.15
押印シーン

実印と認印の違いとは?使い分けと選び方

本記事では、実印認印の基本的な違いから、使用場面、選び方のポイントまでをわかりやすく解説します。

実印は、市区町村に印鑑登録を行うことで法的効力を持つ、「個人の身分」を証明する非常に重要な印鑑です。
一方で、認印は印鑑登録をしていない印鑑のことで、日常的な確認や受領の証として用いられます。

実印と認印の違いとは?

印鑑は、私たちの社会生活において、本人確認や意思表示の手段として広く用いられています。しかし、一口に印鑑と言っても、実はその用途や法的効力によっていくつかの種類に分かれていることをご存知でしょうか?
特に「実印」「認印」は、名前は似ていてもその意味合いや重要性は大きく異なり、明確な違いが存在します。

まず、最も根本的な違いとして挙げられるのが、印鑑登録の有無です。実印は、お住まいの市区町村役所に印鑑登録を行うことで、「本人の印鑑である」と公的に認められた印鑑のことを指します。この印鑑登録によって、実印は法的な証明力を持ち、重要な取引や手続きにおいて、本人の意思を示すものとして扱われます。一方、認印は、市区町村役所への印鑑登録を行っていない印鑑であり、実印以外の印鑑を一般的に認印と呼びます。

実印は、印鑑登録証明書(印鑑証明)とセットで用いられることで、その法的効力が客観的に証明されます。これにより、「確かに本人が実印を使って押した書類である」という信頼性が確実に保証されるのです。

一方、認印にはこのような公的な証明がないため、実印ほどの強い法的効力は持ちません。契約書などに認印が押された場合でも、その法的効果自体に優劣はありませんが、もし相手が「自分が押した印ではない」と主張した場合、それが本人の印鑑であることを立証するのが難しいという側面があります。

このように、実印と認印は、印鑑登録の有無という点において明確に異なり、それが法的効力の差に繋がります。次に、これらの違いが、実際にどのような場面で影響してくるのかを見ていきましょう。

場面別に見る実印と認印の用途

実印と認印は、その法的効力の違いから、使用される場面も大きく異なります。
実印は、個人にとって最も重要な印鑑であり、主に以下のような、高額な金銭のやり取りや、重要な権利・義務が発生する場面で使用されます。

  • 不動産の購入・売却
  • 自動車の購入・売却
  • 住宅ローンの契約
  • 銀行融資
  • 遺産相続・相続登記
  • 生命保険や自動車保険への加入および保険金の受け取り
  • 公正証書の作成
  • 法人設立登記の申請
  • 自動車の廃車手続き
  • 賃貸契約の連帯保証人

これらの場面では、実印とその印鑑証明書をセットで提出することで、本人の意思確認を行い、取引の安全性を高める役割を果たします。

一方、認印は、実印が用いられるような重要な手続き以外の、日常的な場面で広く使用されます。
具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

  • 宅配便や郵便物の受け取り
  • 回覧板や社内文書の確認
  • 銀行での簡単な手続き(書類の訂正など)
  • 軽微な文書への確認印

これらの場面では、書類の内容を確認し、了承したという意思を示すために認印が用いられます。実印のような厳格な法的効力は求められないため、手軽に使用できる認印が適していると言えるでしょう。

このように、実印は重要な契約や手続きに、認印は日常的な確認行為にと、それぞれの役割に応じて使い分けられています。

実印作成の重要なポイント

実印は、あなたの身分を証明する非常に重要な印鑑であるため、作成にあたっては慎重に検討すべきポイントがいくつかあります。これらのポイントを押さえることで、安心して長く使用できる実印を作ることができます。

まず、刻印する内容についてです。実印に彫刻する内容は、基本的に住民票に記載されている氏名、氏(苗字)、名(名前)、旧氏(旧姓)のいずれかであれば登録できます。つまり、以下のいずれかの形で作成が可能です。

  1. フルネーム(姓名)
  2. 苗字のみ(姓)
  3. 名前のみ(名)

それぞれの作成方法には、メリットとデメリットがあります。

  1. フルネームで実印を作るメリット
    • 偽造防止・セキュリティの高さ: 文字数が多い分、印影が複雑になり、偽造されにくくなります。実印は最も重要な印鑑であるため、セキュリティ面を重視するならフルネームが推奨されます。
    • 信頼性・重厚感: 重要な契約や法的な手続きで使用する際、フルネームの実印はより正式な印象を与え、社会的な信頼感にもつながると考える人もいます。
  2. 名前だけで実印を作るメリット
    • 結婚による姓の変更に対応しやすい: 結婚などにより姓が変わることがある場合、名前のみで実印を作っておけば、印鑑を作り直す手間を省けるという実用的なメリットがあります。旧姓(旧氏)のまま登録することも可能になりましたが、手続きが必要です。
    • 紛失・盗難時のリスク軽減(可能性): 苗字やフルネームに比べて、個人特定に繋がりづらいと考える人もいますが、実印である以上、重要書類に押印されるとその人の証明となるため、過信は禁物です。
  3. 名前だけで実印を作るデメリット
    • セキュリティ面での懸念: フルネームに比べて印影がシンプルになりやすく、偽造のリスクがわずかながら高まる可能性があります。
    • 家族間での混同: 同じ名前の家族がいる場合、名前だけの実印だと区別がつきにくいという可能性があります。

この点については、文字を判読しにくい印相体や篆書体などの書体を選ぶことで、セキュリティを強化することや、印材を変えるなどで対応することも可能です。
刻印内容の規定は市区町村によって異なる場合があるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

次に、書体の選び方です。実印は、偽造や悪用を防ぐために、読みにくい複雑な書体を選ぶことが一般的です。代表的な書体としては、印相体(吉相体)篆書体などがあります。これらの書体は、文字が複雑に絡み合っていたり、崩されていたりするため、実印が持つ重みと同時に、第三者による偽造を困難にする役割を果たします。単に判読性を低くするだけでなく、日本の伝統的な美意識とセキュリティが融合した書体と言えるでしょう。

サイズも重要な要素です。実印として登録できるサイズには規定があり、「8mmの正方形に収まらず、25mmの正方形からはみ出さないもの」とされています。つまり、印影が小さすぎたり、大きすぎたりすると登録できません。

一般的に市販されている印鑑で、実印用として販売されているものは、この規定の範囲内に収まっていることがほとんどです。
規定の範囲内であればどのサイズでも登録可能ですが、一般的には、直径13.0~18.0mm程度がよく選ばれます。
印面の文字数や、印鑑としての見た目のバランス、持ちやすさなどを考慮して選びましょう。

また、実印は銀行印や認印よりも一回り大きいサイズを選ぶのが一般的です。これは、印鑑の用途によってサイズを変えることで、誤って使用することを防ぐためでもあります。

そして、素材の選択も大切です。実印は長く使用するものであるため、耐久性の高い素材を選ぶことが推奨されます。代表的な素材としては、黒水牛、チタン、柘(あかね)、牛角などがあります。これらの素材は、強度が高く、朱肉の馴染みも良いため、実印に適しています。

これらのポイントを踏まえ、信頼できるはんこ屋さんやオンラインショップで実印を作成することをおすすめします。

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認印作成のポイント

実印が「本人証明」としての役割を担うのに対し、認印は「確認」「承認」といった日常的な意思表示に広く使われます。そのため、認印作成においては、実印とは異なるポイントを押さえることが重要です。

まず、認印に求められるのは「使いやすさ」と「明瞭さ」です。宅配便の受け取りや書類への確認など、日常で頻繁に使う場面が多いため、素早く、そして誰が見てもはっきりと内容が分かることが大切です。

まず、刻印する内容ですが、一般的には苗字のみで作成されることが多いです。認印は、書類の内容を「認めた」という意思表示として使用されることが多いため、苗字だけでも十分に役割を果たします。もちろん、フルネームや名前のみで作成することも可能です。

書体については、読みやすい書体を選ぶのが一般的です。楷書体古印体などがよく用いられます。実印のような偽造防止を重視する必要がないため、比較的自由に選ぶことができます。

素材については、特に決まりはなく、様々な素材のものが使用できます。安価なものでも問題ありませんが、長く使いたい場合は、ある程度の耐久性がある素材を選ぶと良いでしょう。シヤチハタのようなインク内蔵型の印鑑も、認印として使用することができます。ただし、重要な書類への押印には、朱肉を使用する印鑑が望ましい場合があります。

実印との大きな違いとしては、印鑑登録が不要であること、使用される場面が日常的な確認行為であること、刻印内容や書体、サイズ、素材に厳格な規定がないことが挙げられます。また、認印は既製品も多く販売されており、手軽に入手できる点も実印とは異なります。ただし、既製品の認印を銀行印や実印として登録することは、誰でも同じものが手に入るため、悪用のリスクがあり推奨されません。

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書体の違い

実印と認印に関するよくある疑問と注意点

実印と認印に関して、よくある疑問点や注意すべき点について回答します。

Q. 実印と認印は同じものを使用しても良いですか?

A. いいえ、実印と認印は必ず使い分けることを強くおすすめします。
実印は、法的効力を持つ重要な印鑑であり、もし認印と同じものを使用した場合、重要な契約書類が日常的に使用する印鑑で押印されていることになり、セキュリティ上のリスクが高まります。

Q. 実印と銀行印は同じものを使用しても良いですか?

A. 認印の場合と同じく、実印と銀行印は分けて作成し別々に使用することが推奨されます。
もし同じものを使用した場合、紛失や盗難のリスクが高まり、両方の機能を同時に失ってしまう可能性があります。

Q. 認印にシヤチハタを使用しても良いですか?

A. はい、認印としてシヤチハタを使用することは可能です。宅配便の受け取りや社内書類の確認など、日常的な場面での使用には問題ありません。ただし、銀行や役所などでは、朱肉を使用する印鑑が求められる場合もあります。

Q. 実印を紛失してしまった場合はどうすれば良いですか?

A. すぐに警察に遺失届を提出し、登録している市区町村役所に実印の印鑑登録廃止届と、必要であれば新しい印鑑での再登録の手続きを行う必要があります。不正利用を防ぐため、迅速に対応しましょう。

Q. 実印を作成する際、苗字のみでも良いですか?

A. 戸籍上の名前であれば、苗字のみでも実印登録は可能です。逆に、結婚などによる苗字の変更を考慮して名前のみで作成する方もいますが、セキュリティ面を考慮するとフルネームでの作成がより安全です。

最後に

注意点として、引っ越しによる住所変更や、婚姻等による氏名の変更など、印鑑登録の内容に変更があった場合は、速やかに手続きを行う必要があります。

実印と認印の役割を正しく理解し、適切に使い分けることが、安全でスムーズな社会生活を送る上で重要となります。

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